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2009年の終わりにあたって、中国駐在時代に得た知見をまとめることにしました。オフショア業務の知見と、中国社会一般についての知見です。これで中国については一区切りつけたいと思っています。
後者については、長文となってしまったし、歴史に関する話題が入っているのでサイトの方に記事を掲載しました。記事は2本あり、日本の高度経済成長時代と2000年代の中国政府の政策や中国社会が似ている、という話と、もうひとつは、日本はアジア圏か欧米圏か、という、最近話題の書籍「日本辺境論」などでも扱っている、中国の影響力が増大する中で議論がかまびすしい日本のアイデンティティの話です。 日本の高度経済成長時代と2000年代の中国 秩序の東アジアと日本辺境論 前者についても、それほど多くを語ることは無いのですが、駐在中の業務を通じて強く感じたこと、また、見込み違いだった点を下記にご紹介したいと思います。なお、ここではIT業界のオフショア業務一般に適用できそうな内容を記載しています。私の職場・勤め先の体制に依存した内容は省いています。 【1】業務を通じて得た知見 1.業務はWin Winであること。 IT業界のオフショア業務は、もともと日本でも、外注・下請けに任せていた開発業務が中心です。しかし、日本でも、封建時代のようなIT業界の、しわ寄せを下請けにまわすゼネコン構造は通用しなくなってきています。いわんや中国人のIT技術者には通用しません。中国では、内陸部の貧しい農村出身者が、出稼ぎ労働者として過酷な肉体労働に従事していますが、IT業界に携わる技術者には大学卒の、中国国内では、エリート階層に属する人もいます。特に、オフショア業務という、日本語の読み書きがある程度できる技術者に、単調な繰り返し業務のような付加価値の低い業務を出しても通用しません。良く、中国人の離職率が高い、と言われますが、中国社会の私営企業では終身雇用の習慣が無い為、成長性の無い業務は、即将来の失職時の保険が利かないことになることから、付加価値の低い業務・成長の無い業務を与えると離職されてしまうわけです。これは、「中国人は直ぐ辞める」ということではなく、「終身雇用」という保証が無い為、自分を守る為に、付加価値の高い業務に移るだけの話なわけです。最近の日本でも、終身雇用の崩壊に伴い、付加価値の低い業務や成長の無い業務の離職率は高まってきえちるものと思います。また、オフショア先が、外部の会社ではなく、私の場合のように、同じ会社の正社員である場合には、絶対に避けるべきです。 このような内容を知ることになった理由は、私の業務における日本側の発注者に、付加価値の低い、外部業者に委託していた「作業」を、そのまま中国サイドに移管しようとし、社員の離職・モチベーション低下を招いたことがあります。 2.委託開発業務モデルと、ナレッジ集約型モデルが向いている。 委託開発モデルとは、システム構築、日本語による資料作成業務。発注仕様と成果物が明確な作業です。ナレッジ蓄積型モデルとは、技術的な質問事項を調査し、回答するモデルです。いづれのモデルも会話の割り合いの高いインタラクティブなコミュニケーションを必要としない業務です。この理由は、現在のオフショア業務は、インターネットのインフラに大きく依存している為です。日本語ができる中国人といっても、会話が得意な人より、読み書きができる人の方が圧倒的多数を占めている為です。理由は3つあります。 1)読み書きであれば、ネット辞書、翻訳ツールを使って簡単翻訳できる。 2)日本語と中国語で同じ意味の漢字が多く、読解は習得し易い。 3)筆記能力は、ブラウザでアクセスできるネット上の日本語文章や、社内データベースから検索される日本語文章のコピーで補うことができる。 つまり、メールやチャットで、それなりの日本語文章を書けるからといって、会話能力があるとは限らない、ということです。メールや作成資料の日本語文章が上手だからといって、安易に日本語会話業務も可能だと考えることは、避けた方がいいと言えます。 3.日本語コミュニケーション上の誤解 平均的なオフショア人材は、日本語における以下の3つのスキルは、別のものだということがわかりました。 1)顧客と会話できるレベルの会話力 2)社内コミュニケーションができるレベルのコミュニケーション力 (必ずしも会話力である必要は無く、メールやチャット、文書資料やPPTなどを用いた画像などを用いて、意図を伝えるスキル) 3)日本語ビジネス文書筆記能力 私の勤め先のサンプルでは、会話能力が高い人程、日本語ビジネス文書作成能力は低い。逆に、一番会話スキルが低い人が、もっとも高い日本語ビジネス文書筆記能力を備えていました。理由は単純で、会話力がある人は、「話言葉をそのまま文章に書いてしまう」ので、顧客に出すようなビジネス文書としては使えず、日本側の文章修正負荷が非常に高くなり、投資効果が出ない結果となってしまいました。反対に、会話ができない人は、膨大な日本語ビジネス文書のサンプルを蓄積しており、それらからコピー&ペーストをすることで、そのまま顧客に出せる品質の日本語文書を*作成*していました。文章を「書いている」のではなく、「作成している」という点がポイントです。つまり、このタイプの人の日本語スキルは、ナレッジ蓄積型モデルに該当することになるわけです。 更に、ビジネス文書の上手な人は、ホームページやマニュアルに書かれている言葉に強く、口語に弱い、という特徴があります。また、日本語ビジネス文書が上手な人は、日本のビジネスマナーも心得ている傾向が見られました。この点で、私は、日本の新入社員教育や、大量に出版されている新卒者向けビジネスマナー解説本は、日本のビジネススキルを底上げする重要な日本文化であると思うようになりました(中国では、大手企業であっても、日本の新卒教育のようなビジネスマナーを必須教育としている企業はまだ少ない)。ビジネスマナー読本には、報告書や資料、伝言の書き方、話を整理して伝える方法などがサンプルとともに詳細に記載されており、こうした知見が、日本語ビジネス資料作成能力に寄与しているようです。私が日本で購入してきた、新卒向けビジネスマナー読本をむさぼるように読んでいたのも、会話力が低く、ビジネス文書が上手なタイプの社員でした。 このようなことから、日本側が書く文章も、会話調ではなく、堅苦しいくらいの「マニュアル言葉」である方が、意思の疎通率が高まるのですが、日本人側は、日本語が通じる、ということで、「くだけた日本語のいい廻しも理解できるのだろう」「ホウレンソウは理解しているよね」と安易に思い込んでしまう傾向がありましたが、これは大きな間違いでした。寧ろ、日本側が使う日本語も、英語をつかう様な感覚で、日本語を使う必要があります。以下に、私が作成した、「日本人向けの日本語マニュアル」の一部をご紹介します。 1)辞書や翻訳ツールでひきやすい日本語文章を書く 2)指示代名詞を少なくする 3)主語を明確化する。会話・文章において、頻繁に「誰が」を確認する 4)文章の文末を、最後まで正しく言い切る(体言止めは却下) 5)単語の種類を絞る(似た意味の単語を複数使わず、極力ひとつに絞る) 6)使用率の低いカタカナは、英単語で記載する 7)訓読み単語は使わず、音読み単語を使う 8)くだけたやりとりは却下。堅苦しいアナウンサー言葉、マニュアルやニュースサイトで利用されている文章を使う 【2】見込み違いだったこと 1.採用事情 駐在前は、「日本のIT人口は40万人不足しており、年間2万人の新卒しか得られない」という日本の採用事情の辛さに対して、「中国では日本の人口の10倍もいるのだから、採用は容易だろう」と予想しておりました。しかし、実際には、赴任後、採用担当者から聞かされたことは、 1)今の学生にはIT業界は人気が無い。新卒に人気があるのは金融・製造業。 2)日本語が会話もビジネス文書作成もできて、更に技術力もあるIT人材はそもそも稀少。 3)深圳は、日本で言えば広島のような地方都市で人気が無い。人気があるのは北京や上海。(実際、半年間で100通の履歴書応募があったが、場所が深圳だとわかると、90人に辞退され、残りの10名を面接したが、スキル不足で半分が落選。残りの5名は、給与や志望にずれがあり採用に至らず、という状況でした) 4)日本語ができて、技術力もある人材を深圳に来させようとすれば、日本側で作業をした方が安上がりになる程の高給を支払う必要がある。 2.途上国なので、文句も言わずにどんな仕事でもやるだろう、という予想 これも見事に裏切られました。マズローの欲求段階説というものがありますが、現在の中国人ITオフショア技術者人材をあてはめてみると、日本側は、「生理的欲求」「安全の欲求」レベル(食べていく為に文句を言わずに仕事しろ)にあると思い込んでいるように思えますが、日本語や英語ができるIT人材は、既に「承認の欲求」や「 自己実現の欲求」を求めるレベルにあるように思えます。実際、所得が3000ドルを超えてくると、「承認の欲求」や「 自己実現の欲求」に進むようです。中国は、2009年に国民1人あたりの平均年収が3000ドルに到達したとされている為、既に、「食べていく為に文句を言わずに仕事しろ」は通用しない段階に来ていることになります。そうして、IT業界のオフショア人材は、中国語しかできない人材でも、年収3000ドルは突破しているのでした。 また、深圳周辺では、日本の製造業の現地工場も多数あり、そこでは組み込み系のプログラミング業務を担当するプログラマは多数いるものの、彼らはそれほど高度な日本語を必要としておらず、しかもプログラムを組むことだけしかできない為、より高度な作業ができるような学生は、最低でも大学卒である必要があり、大卒の家庭は比較的裕福な育ちであるため、要するに3K作業と言われるIT業界で働くには、忍耐力の低い人が予想以上に多く見られるなども予想違いでした。更に、一人っ子政策の影響で、1980年以降出生者は、特に忍耐力が低く、これには、年配の中国人社員のマネージャ自身が、「彼らは使い物にならない」と苦言を呈する状況でした。。。。(とはいえ、私の勤務先では、逆に深圳という僻地にわざわざ働きに来るような人=そんなに選択肢が豊富なわけでなない人、ということで、割合忍耐力がある人が多かったように思えます。上記苦言を呈していたのは、北京のマネージャ。北京は、転職先がいくらでもあるので、深圳よりも離職率が高い、という傾向があるようです) 3.途上国なので、物価も所得水準も低く、優秀な人材を安く雇えるだろう これもまったく予想はずれ。「日本人と同じ品質・技術力で業務ができるのであれば、日本人と同じ給与でないとおかしい。日本人より遥かに給与の低い我々に、日本人と同じレベルの成果物を求めるのはおかしい」 という国際的に絶対的な所得価値観を持っている人が目立ちました。「安かろう、でもそんなに悪くなかろう」が、投資目安と言えるのではないでしょうか。 4.インフラソフトよりも、顧客向けソフトの業務がマッチ これは唯一良い方の見込み違い。ビジネスインテリジェンスソフトや、グループウェア、セキュリティなど、エンドユーザーが利用するソフトウェアはオフショア向きでは無いと予想していました。顧客の一般社員が直接操作するソフトなので、日本の業務知識や、日本の顧客に関する知見がオフショア側にも必要となる業務だと考えていた為です。OSや、ネットワーク、データベースなどのインフラ系ソフトウエアの業務が、言語依存度や業務依存度が低く、また技術者が扱うソフトウェアなので、こちらの方がオフショアには向いていると思っていたのですが、結果は逆でした。前者は、 1)「顧客関連部分は全部日本側社員が引き受ける(しかない)ので、それ以外の部分を中国側に依頼したい」と、作業分担の線引きが明瞭に成り易い 2) ソフトウェアの機能と、そのソフトができる業務が一致している為、そのソフトを利用した業務経験の無い中国社員でも、業務の理解が容易 3)エンドユーザーが利用する場合、簡単な初心者用手順書などを作成する必要があり、中国側社員も、エンドユーザーの作業が高度化するにつれて、作成する資料が扱う機能も高度化する、という、エンドユーザーの学習ステップにあわせた資料を作成しながら一緒にStepByStepで学習ができる 4)画面系のソフトなので、作業支持の理解が容易で、成果物のイメージ把握も容易 という利点を発見することになりました。後者は反対に、日本側担当との分担が不明瞭になり、更に、 ・災害対策に使える機能をピックアップして資料を作成して欲しい ・検索速度を10倍にする方法を考えて欲しい ・顧客のシステムに問題があるかどうか、この送付する資料から判断して欲しい など、抽象的で、中国側作業者にとって、イメージが掴みづらい、経験が必要な作業が多く、日本側との協業ポイントを見出すことが困難だということが判明しました。私のような立場のブリッジ社員がいれば、作業を細かく分けて指示を出せば良いのですが、私の永続的な駐在はありえない(中国に永住するつもりで中国支社に転籍しない限り)という勤め先の方針もあったため、インフラ系業務は取りやめる方向となりました。 私が得た、公開できて、誰かのお役に立てそうな知見は以上となります。お役に立てれば幸いです。 それでは来年もよろしくお願いいたします。
by zae06141
| 2009-12-31 23:59
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