古代世界の午後雑記


「古代世界の午後」更新履歴と雑記
by Solaris1
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自分史に関する記憶と史料

※宣伝 今月号の雑誌Penは古代エジプト特集[古代の美を探して、エジプト]で、よくあるムック本よりよくできてます。ナショナルジオグラフィックのような巻頭特集ではなく、全体の2/3が古代エジプト特集です。雑誌『ニュートラル』のような観光臭もなく、歴史と考古学に特化しています。700円でこの内容は買いだと思います。個人的に『Pen』は、美容院に置いてある、男性用ちょっと高価でおしゃれなモノマガジン、という印象があったのですが、今月号はどうしちゃったのだろう、という内容です。是非書店で見てみてください※

 最近書籍購入スペース確保のために、昔の書類を処分することが増えています。先日書類を処分していたら、中学時代から30代初頭にかけての読書・視聴映画リストが出てきました。これは貴重な自分史の資料なので処分はしないことにしました。リストを眺めていてまず思ったことは、「この資料は古代・中世の史料に似ているなあ」ということでした。どういうことかというと、

1.古代(高校・大学)

大学時代のリストがもっとも整然とまとまっていて、B5ノート1枚を4列に分割し、1行に1作タイトルが記載され、映画については視聴した月が、読書については年月日が記載され、更に映画については年間視聴本数集計や、視聴映画館毎の訪問回数、視聴方法(映画館/テレビ/ビデオ)、約80の映画館の採点表までついてます。中学・高校時代の記録は年度だけ記載されていて、年月日が記載されておらず資料としての有用性は少し落ちます。大学時代の記録はイメージ的には古代ローマ最盛期の同時代文献史料、中高校時代の記録はイタリア半島統一以前について記述した後世の史書史料という感じです。

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# by zae06141 | 2016-12-12 00:14 | 雑記 | Comments(0)

アンガス・マディソンのローマ帝国GDP算出方法を漢王朝にあてはめてみた

 アンガス・マディソンは、『Chinese Economic Performance in the Long Run 960-2030』(2007年)で、中国歴代王朝の一人上がり平均GDP(以下にGDPと称しているのは、アンガス氏が開発した"1990年ゲアリー・ケーミスドル”というもの)を、漢代紀元1年450ドル、960年450ドル、1000年を466ドル、1300年600ドル、明代1500年600ドル、1600年600ドル、清代1700年600ドル、1820年600ドルとしていて(1000年の数字のみ、フローニンゲン大学の氏のサイトのxls表から引用)、近代以前の中国史上一人当たりGDPが上昇したのは、宋代だけ、だとしています。しかし、『Chinese Economic Performance in the Long Run 960-2030』を読んでみても、宋代から元代における農工業などの技術革新の様子を描いた記載はあっても、なぜそれが、450→600という数字となったのか、についての数字的根拠の記載はありません。清代1820年の600という数字は近代の数字ですから比較的数値的根拠がありそうですが、宋代漢代がなぜ450なのか?

 昨年出版された『世界経済史概観―紀元1年-2030年』(岩波書店)に、ローマ帝国各地域別平均所得の算出方法が記載されていたことから、漢王朝に対しても適用して数字で遊んでみました。ご興味のある方はこちらをご参照ください

実はこの記事を書き始めたのは昨年11月頃のことなのですが、宇都宮清吉著『漢代社会経済史』(1955年)に登場する、都市化率30%という数字をどう処理しようかと悩んでいるうちに1年たってしまいました。1年ぶりに思い立って再度取り組んでみたところ、アンガス・マディソンが用いているローマ帝国の都市化率の根拠も大同小異だと思えるようになったので、取り合えず記事を完成させた次第です。

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# by zae06141 | 2016-12-02 00:08 | 古代中国関係 | Comments(0)

イラン製作ミステリー映画『予兆の森』(2013年)

 イランのミステリー小説や映画について語った文献やサイトをまだ発見できていないので、本作をミステリー映画と言い切ってよいのかどうか、という議論はあるかと思うのですが、現在本作以上によりミステリー映画と呼ぶことが可能なイラン映画を発見できていないため、本作を挙げることにしました。より正確にはミステリー的映画です。更に言えばスリラー映画です。イラン映画なのでグロい場面はありませんが、それでも本作はスリラーといってよいと思います。

 本作は、2014年の福岡国際映画祭で上映されており、日本語感想もいくつかネットにあがっていますが、日本語dvdは発売されていないため、内容についてあまり知られておらず、更にこれをスリラー映画と評しているものが見つからなかったので、この記事を書くことにしました。


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# by zae06141 | 2016-11-25 00:14 | 北米西欧日以外のミステリー映画 | Comments(0)

イラン製作ミステリー的映画『火祭り』(2006年)

 本作は、2012年の福岡国際映画祭で『火祭り』の題名で上映されています(『火祭り』又は『花火の水曜日』,イラン映画,で検索すると出て来ます)。

 イランのミステリー小説や映画を紹介している文献やサイトを調べたわけではありませんが、イランではミステリー小説や映画は殆どないようです。しかし、IMDbでミステリー映画の検索をかけると、評点上位のミステリー作品に、アスガル・ファルハーディー監督作品がヒットします。『彼女が消えた浜辺 [DVD]』、(2009年)『別離 [DVD]』(2011年)、『ある過去の行方 [Blu-ray]』(2013年)は日本でもdvdの入手は容易です。ファルハーディー監督は、手法としてミステリー的演出を採用しているだけで、これらの作品は厳密にはミステリー映画ではなく、『火祭り』も同様なのですが、『火祭り』については、ネットで作品紹介されていても、ミステリー映画として紹介している記事は無さそうなので、本記事では、ミステリーの観点から紹介することにした次第です。



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# by zae06141 | 2016-11-15 00:11 | 北米西欧日以外のミステリー映画 | Comments(0)

後期パルティア関連論説:南部玲生氏『後期アルサケス朝の帝国統治』と桑山由文氏『2世紀ローマ帝国の東方支配』

 今年3月頃ですが、昨年12月の『北大史学』55号22-42頁に掲載された南部玲生氏『後期アルサケス朝の帝国統治』と西洋古代史研究』2004年号に掲載された桑山由文氏『2世紀ローマ帝国の東方支配』を読みました。

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# by zae06141 | 2016-11-05 00:07 | 古代イラン関係 | Comments(0)

セウェルス凱旋門に描かれたパルティアの都クテシフォンの概観

※10/26(水)~ トルコの歴史ドラマ『エルトゥールル』第三部放映開始 第二部以上にビザンツが登場しそうです。

 同時代に限らず後世含め、史料が殆どなく、遺跡すら殆ど定かではないパルティア・サーサーン朝時代の都クテシフォン。サーサーン朝時代の一部の遺構は少し発掘・調査されているものの、概観については殆どわからず、パルティア時代となると、まったくといっていいほど史料が無い幻の都。パルティアもサーサーン朝の都市は、ローマ都市のようにある程度の統一的な規格が見られる都市と違い、遺跡を見る限り、地方により結構多様です。パルティア時代のメソポタミア都市遺跡として有名な世界遺産ハトラ遺跡がありますが、ハトラのイメージをそのままクテシフォンに適用し難いところがあります。ローマについても、ローマやコンスタンティノープルの概観を地方都市から類推することは難しいものがあり、首都の景観は独特のものがあります。そういうわけで、まったく大した内容ではないのですが、少なくともクテシフォンに遠征したセウェルス帝が作らせた凱旋門のレリーフに登場するクテシフォンの概観は貴重なものがあります。

 


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# by zae06141 | 2016-10-26 00:34 | 古代イラン関係 | Comments(0)

古代ローマ歴史映画『ブレンヌス~ローマの敵~』(1963年)

 7月に、京都大学学術出版会からリウィウスの『ローマ建国以来の歴史2 伝承から歴史へ(2)』が出版されています。本巻で扱われているガリア人のローマ占領事件を扱った映画が本作です。

 古代都市ローマは、前387年にガリア人の襲撃を受けて占領されて以降、後410年ゴート人に占領されるまでの797年間、外敵に占領され ることはありませんでした。これは、その前387年におきた占領事件を題材とした作品です。表題のブレンヌスとは、このときローマを占領したガリア人の首領の名前です。かなりニッチな主題ですが、製作年の1963年は、ローマ陥落1350周年であることから、1350周年記念という意味合いもあるのかも知れません。内容にご興味のある方はこちらをご覧ください

 この作品は、ブルガリア在住当時テレビでたまたま後半だけを見て以来、ずっと探していた作品です。途中の合戦や最後の格闘場面が記憶と同じなので、この作品で間違いないと思うのですが、ラストが少し違いました。テレビで見たラストは、最後、ローマ軍が全世界に進軍してゆく映像がオーバーラップし、本作で描かれた弱小時代のローマが、その後地中海世界の覇者となる、という解説が入って終わりました。恐らくブルガリアのテレビ局が独自に編集したものだったのかもしれません。他の作品という可能性も残りますが、取り合えず長年見たかった作品が見れた可能性が高いので、またひとつ人生の願いが叶った思いがしています。

 本作も以前ご紹介した『ビザンチン大襲撃』も、IMDbの映画紹介では、Adventureタグしかついておらず、今回Historyタグを追加しておいたのですが、最近歴史を題材としているにも関わらずHistoryタグのついていない1960年代のイタリアの peplum film(ソード・サンダル映画)を沢山発見しました。イタリアのペプラムフィルムのうち、比較的歴史映画といえそうなものが含まれているのは古代ローマものだけだと思っていたのですが、中世のイングランドやスペイン・中近東を舞台とした、イタリアと全然関係のない地域の作品も沢山製作されていることを知り驚きました。面白ければ何でもいいという姿勢、大好きです。取り合えず視聴してみて、(私の勝手な主観で)歴史映画といえそうな作品については、今後ご紹介していきたいと思います。

※サイトの「古代ローマ世界のリンク・書籍」の末尾に「古代末期」という項目を設け、古代末期(5-8世紀)を論じた書籍の紹介を追加しました。昨年、近年日本で多数出版されているローマ帝国衰亡論関連書籍をまとめて読んだこと(今年は更に、32年ぶりにチェインバース編『ローマ帝国の没落』(創文社/1973年)も再読)、今年年頭にプロコピウス『秘史』を読んだこと、西ゴート映画『アマーヤ』を見たことなどから、古代末期についての関心が高まってきたことが背景にあります。紹介している書籍や、この時代について読んでみたい書籍のポイントは、考古学成果を取り入れた研究であること、言語論的転回以降の史料論を取り入れていること、旧ローマ帝国領土全属州に関するもの、史料と解題・研究史と最近の研究動向・政治・経済・社会・文化など全体像描いていること、の4点です。もともと古代末期には学生時代から興味はあったのですが、当時はまだこれらの要件を満たす日本語文献は当時はほとんどなかったのでどうしようもなかったのですが、最近は、これらすべてを満たす書籍はないにしても、部分部分で要件を満たす書籍が結構出てきていることを知りました。6月末の時点では、今年は映画ばかり見て過ごしそうな感じでしたが、7月は急激に読書に回帰しました(リストに並べた書籍は、昔読んだもの、未読のもの、7-8月に読んだもの、図書館で一部参照したもの、など様々です)。

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# by zae06141 | 2016-10-16 00:09 | 古代ローマ・ビザンツ関係 | Comments(0)

歴史映画について ver2

 『古代世界の午後』というサイトを開始した2000年8月に、「歴史映画について」というこの記事を書きました(当時はサイトに掲載していた)。その記事の末尾に以下の内容を記載していました。

 【 ところで見てみたい映画ってありますよね。 誰か作ってくれないかなぁ、という映画。

「コンスタンティノープル陥落」やブルガリアのサムイルとバシレイオスの30年にわたる死闘を描いた伝記映画「バシレイオス2世」、ムガル帝国のバーブルーアクバルに至る大河物語。後漢時代西域を征服した班超の生涯、また前漢西域への使者張騫の冒険、エジプトイスラム史上唯一の女性スルタン、シャジャル =アッドゥルの生涯、以前この雑記でも書いた 赤羽亮「流砂伝説」の映画化、など沢山あります。 】

しかしこの15年の間に、「バシレイオス2世」以外は、ほとんど実現してしまったことがわかりました(該当映画は本記事末尾に記載)。それを受けてというわけではないのですが、歴史映画について別の角度から語ってみました。


【1】歴史映画について (2) 2016年9月版


 最近歴史映画のもつ意味について考えています。


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# by zae06141 | 2016-10-06 00:32 | その他の時代の歴史映画・ドラマ | Comments(0)

彼は帰ってくる、 でも私/あなたの為じゃない 映画『帰ってきたヒトラー』

 最も印象に残ったのは、ラスト近くのセリフ

”君に私を消すことはできない
私は君の一部なのだ
君たち全員の”

および、エンディングのひとつ前の歌カーチャ・エプシュタインの本作の原題でもある歌”Er Ist Wieder Da”(彼は帰って来る)の歌詞(オリジナルのドイツ語版の歌詞はこちら英語版テキストはこちら)の中のいちフレーズです。

”彼は戻ってくる でも私の為にじゃない*1”

 この映画には、うっかりしていると、ユダヤ人への感情を露にする部分と犬殺しさえしなければ、この人に任せてもいい、と思えてしまう部分があります。映画のヒトラーは真面目に現在のドイツの諸問題を解析し、人々に問いかけ、真摯にその解決を探る人物として描かれています。ひっかかるのは反ユダヤ感情や犬殺しと世界征服を口にする場面くらい。戦争や弾圧をしない、任期限定の独裁者なら歓迎、という風潮は実際ありそうです。しかし、本作においては、エンディングの歌詞で気づかされます。


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# by zae06141 | 2016-09-29 00:18 | 世界情勢・社会問題 | Comments(0)

普通という名のパノプティコン:村田沙耶香著『コンビニ人間』とドストエフスキー

 アマゾンレビューにもレビュー(こちら*1)を書いたのですが、書き切れない部分が多いのでこちらに追加を書くことにしました。この本は、内容自体も面白いのですが、読者の反応を読む方がもっと面白いという、そして賛否が「あちら側」「こちら側」「どっちでもないけど共感できる部分があります」の概ね三者に分かれているのが特徴的です。

*1 10/3 レビューの題名を変更しました。本作は、「普通という名のパノプティコン」を風刺した小説だと考えるようになった次第です。結局本記事の題名も変えました。

 私にとって小説や文学、映画は、基本的には、共感や感情移入というより、作者や監督の主張は何なのか?、この作品がヒットした社会的・心理的土壌は何なのか? という分析的な読み方をしてきたので、「登場人物に感情移入」という視点を意識するようになったのはここ数年のことです(「面白い・つまらない」はありました)。もちろんそれ以前に感情移入が無かったわけではないものの、個人的好き嫌いは二の次だと思っていたので、好き・嫌い、共感する・しないで書かれているレビューを読むと違和感を感じていたのですが、いつの間にか自分も、アマゾンレビューの「参考になった」「ならない」ボタンを、「共感した・しない」で押している場合があることを意識するようになりました。アマゾン・レビューも、「製品紹介・批評」という意味で理解していたので、できるだけポジション・トーク的なものは避けて製品紹介に徹しようと思っているものの、やはり限度はあります。本書は特に、好き・嫌いのレビューが目立つもので、この手の作品への言及はなるべく避けたいものの、実際読んでみたところ、分析的に解体できる部分もあるため、レビューを書いてしまいました。キーワードのひとつはドストエフスキーです。


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# by zae06141 | 2016-09-22 00:15 | 世界情勢・社会問題 | Comments(0)