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2013年ドイツ製作。日本でも邦訳が出ているノア・ゴードン作『千年医師物語1 ペルシアの彼方へ』の映画化です。米国の小説ですが、なぜかドイツで製作されています。Wikiの原作者ノア・ゴードンの記事は、英語版の文字数に対して、ドイツ語版の文字数は倍以上多いので、ドイツで人気があるということで、ドイツで映画化されたのだと思われます。見た限りでは、ドイツやドイツ人が一切登場しない作品です。映画『black death』やドラマ『大聖堂』は、英国も製作に関わっていますが、本作はドイツだけの製作にも関わらず、物語の1/3が英国で展開する話を作るのが凄い。場所をドイツに移しても本質的には関係なさそうに思えるのですが、もしかしたら、「世界の果てから来た」という主人公の立ち居地を強調するため、英国でないといけない、ということなのかも知れません。今回、いつにも増して取り留めのないことをずらずら書くだけの感想となってしまいましたが、とりあえず感想を書いてみました(以下more)。
本作は、現時点では日本公開予定は無いようですが、公開されそうな気がしますし、公開されなくても、dvdでのリリースはありそうなので(154分は長すぎるので、110分台に短縮されるかも知れませんが)、あらすじや画面ショットの紹介はしないことにしました。映像の感じは、予告編の通りです。予告編は何種類かあるようですが、ドイツ版のこれが、2分半と長く、視聴しながら、画面ショットをとりたいな、と思った場面がほぼ全て載っています。1分半版の予告編は、色合いもいまいち(特にドーバー海峡の場面!)なので、ドイツ版の予告編がお奨めです。ドーバー海峡の深いブルーの美しい海の色と、断崖上の緑の台地のコントラストには、思わず旅行にいきたくなってしまうものがありました。 映像の感覚は、最近の西欧の歴史映画と同様、リアルなタッチです。CGはつかわれていますが、ファンタジー色は殆どなく、若干『プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂』のような映像の作品なのでは、との予想もあったのですが、まったく外れました。しかし、かえってリアルな映像ゆえ、11世紀のロンドンやイスファハーンの映像が、本作に染まってしまいそうな感じがします。とはいえ、イスファハーンの石造建築物は、明らかにオスマン朝建築様式のものがあり、イスファハーンの城壁も、本作のような四角張った城壁よりは、イランのテレビドラマ『シェイク・バハーイー』に登場した16世紀の城壁の再現映像の方に実際は近かったのではないかと思えますし、イスファハーンのある場所の地形も、実際の地形とはかなり異なっているように思えます。都市のイメージは、イスファハーンというよりも、エルサレムというイメージです。とはいえ、じゃあ11世紀のイスファハーンがどうだったのか、というと、わからないので、この点で、本作でも、わからないということが色々わかった、と思わされました。医療道具、建築物、市場の様子、シャンデリア、日常生活文物、鳥篭、天文台、図書館・・・そのすべてが、史実はどうだったのか判断できず、自分の知識の無さがよくわかりました。実のところ映画に登場するオスマン朝様式の建築物も、セルジューク朝建築にも見えなくもないところもあり、どこまでがありそうもないオスマン建築で、どこからがありそうなセルジューク建築なのか、見分けがつきませんでした。ブワイフ朝君主やセルジューク人の装束や鎧も、違うような気もするけど、じゃあ史料的にどうなの、と考えてもわからない。。。。わかったところは、英国でユダヤ人が主人公に見せた地図のところくらい。ほぼイドリーシーの地図なので、これはありそうな話です。 ストーリーは、1037年に歿したイブン・シーナーが、イスファハーンでセルジューク軍の攻撃に遭遇するなど、史実と異なる部分があるものの、当時既にトルコ族であるガズニー朝にイスファハーンは攻められ、イブン・シーナー没後20年程後にセルジューク軍支配下となっているので、歴史の大きな流れとしては、問題ありません。本質的なところはだいたいあっているので、この時代のイランの歴史にあまり詳しくない人にとっては、この時代のイランへの案内として悪くない作品だと思います。 全体的に見て、明らかにイスラーム文明の方が文明が進んでいたように見えますが、英国人の主人公が、人体解剖をし、その成果をイスファハーン君主の外科手術で示して、師のイブン・シーナーを越える点には、やはり西欧が作る映画だと感じました。物語の前半に登場する英国の景観や風俗と比べると、ユダヤ人やイスラーム社会の方が先進的に見えますが、ラストシーンに一瞬登場するロンドン市街の遠望(これはドイツ版予告編にもでてくる)を見ると、ロンドンもあまり変わらないんじゃないの、と思えてしまい、一瞬しか登場しないとはいえ、ロンドン市街の俯瞰ショットは、製作者側の意図を感じました。当時のロンドンはどうだったのか、ノルマン・コンクェスト以前の中世ロンドン市街の様子なんて、考えたこともなかったので、実際はどうだったのか興味が出てきています。英国からイランに繋がるユダヤ人のネットワークにも興味を惹かれました。 イブン・シーナー(980-1037年)をベン・キングスレーが演じていましたが、この人も変わった歴史映画に沢山でていますね。『プリンス・オブ・ペルシャ -時間の砂』にも出ていましたし、『イブン・バトゥータ メッカへの旅』とか、20世紀初頭のオスマン朝もどきを描いたハーレクインロマン風作品『ハレム』(『シーク』に近い話)とか、『ヨセフ』『モーゼ』『十戒』とか。最近だとツタンカーメンのドラマ『TUT』とか。私の中では、フランコ・ネロに次ぐ、東欧・中近東のマイナー歴史映画俳優というイメージになってしまいそうです。 私が見たのは英語版なのですが、わからなかった点が2点程あります。side sicknessという病名が日本語の何に相当するのか、という点(検索しても、google翻訳でも出てこない)と、主人公がラスト近くの裁判で、わざわざ、自分はユダヤ人ではなく、キリスト教徒だと明かすところ。キリスト教徒と明かしても明かさなくても、裁判の結果は変わらないように思えるのですが。。。。 IMDbの映画紹介はこちらです ところで、同じ2013年のトルコ映画で、『Karaoglan(カラオグラン)』という、13世紀を扱った作品があります。1965年から72年にかけて8作制作されたベイリク時代のトルコを西部劇風なテイストで描いた時代劇ですが、2002年にトルコでテレビシリーズ(こちら)として放映されたようで、「壮麗なる世紀」や「Fatih 1453」など歴史作品のヒットに乗じて映画化の運びとなったものと思われます。なんと言うか、形容しがたい出来栄えとなっています。近年の日本でも、デビルマンとかキャシャーンとかガッチャマンとか、30年くらい前の作品を映画化して失敗した、というパターンが続いていますが、あんな感じといえばいいのでしょうか。好んでチープとしたわけではなく、技術力、財力ともにチープだった時代に、精一杯頑張ったB級映画のテイストを、近年の技術で予算をかけてやると(経済力がついてきたとはいえ、6億円の予算は、トルコでは大きい方ではないでしょうか)、肝心の何かが抜け落ちて無味乾燥になってしまう好例という感じ。実際IMDbの評点を見ても、昔の映画シリーズは、6.0-6.5の間にあり、1作だけ7.5点のものもあり、2002年のテレビシリーズも5.9点となっていますが、2013年の作品は4.4点。 独特のテイストがあるので、中途半端に紹介するのはやめようと思っていたのですが、この記事で画像がないのも寂しいので、付けてみました。『karaoglan』がナニか知らない方には決して視聴をお奨めするものではありませんが、この作品は、ベルケ汗時代(在1257-67年)のキプチャク汗国と対イル汗国同盟を結ぶことを考えたルーム・セルジューク朝のマラティヤ知事が、姫の護衛にカラオグランをつけ、一行がジョチ・ウルスへ向かうという非常にレアなテーマを扱っている点で独特な作品です。更に、ジョチ・ウルスへ向かう途中でグルジア王国を通過することになり、グルジア王国の映像が登場するという極めてレアな映像が登場するのです。いづれ、まともなグルジア歴史映画を見た時に、きちんと記事を書き直したいと思いますが、取り合えず本作に登場したグルジア王国の都城の映像です。左上がグルジア国王と思わしき人物。王冠が全て布地で出来ているところが、この作品のB級テイストがよく出ているところです。左下の辮髪はイル汗国の武将。左下の画像は、背景に雪をいただくコーカサス山脈が見えていて、現在に残る中世グルジア建築の教会などの町並みがいい感じで収まっています。 右上は、いかにもハリボテな感じの城壁。右下は、いかにもゲーム画像な感じがいい味出しています。トルコには、60年代イタリア活劇ヘラクレスシリーズを真似たタルカンシリーズとうものもあります。カラオグランや、タルカンには、廃鉱山でロケを行なっている昔の日本の特撮ヒーローものの映像と似たような映像が出てきます。今回のグルジア王城も、わざわざ似たようなロケーションを選んだ感じの場所にあり、さして大軍とも思えない少数のモンゴル兵が、ハリボテの王城を攻めるという映像に仕上がっていていい感じです。 追記2014/07/15:中世イラン歴史映画『千年医師物語』の映画評が、イランの日本語ラジオサイトIRIBに掲載されました。「事実に反した映画「千年医師物語」」という題名。イデオロギーに満ちた文章の典型のような内容です。「事実に反した」と、細かい点を幾つも指摘していますが、その程度のことならどんな歴史映画だってそんなものでは、という程度の内容です。そんなことをいちいち指摘して捏造・歪曲というのであれば、近年イランで製作された『ソロモンの王国』や『海のシルクロード』は歪曲捏造だらけとなってしまうのではないかと思ってしまいます。 そのそもこの評論自体明らかな間違いや、読者の誤解を招く文章が挿入されています。例えば、イブン・シーナーは処刑された、これは誤りだ、としていますが、映画では処刑判決を受けるものの、処刑されたわけではなく、「自殺」です。しかも、セルジューク族の侵攻にイスファハーンが陥落する時の混乱とともに、逃亡しようと主人公に誘われたのを断っての覚悟の終わりです。また、「ハリウッド映画に関する疑問と批評」という小見出がありますが、本作はハリウッド映画ではありません。製作会社のARD Degeto Filmはドイツ、DeA Planeta Home Entertainmentはスペインの会社です。仮に、映画の作風が「ハリウッド的」ということであれば、本作はハリウッド的ではありますが、イラン自身が製作した『ソロモンの王国』なども、十分にハリウッド的といえる作品です。 この映画評の文章を真似るならば、「事実と反するIRIBの映画評「事実に反した映画「千年医師物語」」」というところでしょうか。まあ、IRIBはプロパガンダサイトだから仕方がありませんが、確かに欧米流オリエンタリズムの色彩は間違いなくあるにしても、「千年医師物語」程度の娯楽映画にいちいち目くじら立てるようでは、今のイランはつきあいずらい国だと思われてしまっても仕方がないかも。 追記2:2016/01/16 ベン・キングスレー2015年の古代エジプトツタンカーメンを描いたドラマ『TUT』に宰相役で出ています。
by zae06141
| 2014-05-09 00:17
| その他の時代の歴史映画・ドラマ
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