古代世界の午後雑記


「古代世界の午後」更新履歴と雑記
by Solaris1
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各国言語史と文学史の諸本

 ここ数年、毎年各国の文学史本や言語史本を読んでいます。これらの本は、政治史中心の一般概説史では扱いが薄い時代などの社会や人物の動向が描かれていたり、言語や文学論争を通じて当時の政治主題を知ることが出来たり、社会層による利用言語の相違や方言の問題などから、社会史の糸口とすることができます。

 いつの間にか結構冊を重ねてきたようで、整理してみると何かがわかるかと思い、書き出してみました。並べた書籍は、私がどういう書籍なのか認識している書籍で、買っただけで読んでいないものや、図書館で一部を読んだものを含みます。結果、色々なことがわかりました(以下more)



 列の左側が言語史、右側が文学史本です。同じ列は同じ国・地域のものです。■の部分は、現時点では見つけられていないものです。□の空白部分は、日本で幾つか著作が出ているものの、まだ目を通していないので、内容がわからないもの、或いは多くの本のなかからどれを選択していいのか判断できないものです。新書版から1000頁を越える書籍まで様々ですが、それなりに多くの国・地域に渡って出ていることがわかります。


    言語史                     文学史
ラテン語の世界              □
イタリア語の歴史             □イタリア文学史
スペインの言語              □スペイン文学案内
フランス語史を学ぶ人のためにフランス語の誕生  □

ゲルマン語入門              □
北欧の言語(若干文学史含)      □
オランダ語誌                ■
図説ドイツ語の歴史            □

■                        □ポーランド文学史

サンスクリット                □サンスクリット文学史
辻直四郎著作集 第4巻 言語学     □インドの文学(若干インド諸語史の記載有)

ペルシア語の話              □古代ペルシア -碑文と文学-(古代)
                         □ペルシア文芸思潮(中世以降)

アラビア語の歴史             □アラビア文学史アンダルシア文学史
The Semitic LanguagesThe Semitic Languages: An International Handbook(セム語言語史関連)                □古代オリエント集

中国語の歴史               □
韓国語の歴史               □朝鮮文学史
■                        □ベトナムの詩と歴史



 整理した結果、幾つかポイント見えてきました。

① □が空白の項目は、多数出版されている書籍で、内容を確認できていないものです。以下のものがあります。基本的に、メジャーなので、読むのを老後に廻しているものとなっています。
 英語史、英文学史、フランス文学史、ドイツ文学史、ロシア文学史、中国文学史

 ここから、老後に読んでいる時間があるのか、というテーマが出てきたので、これについては次回記載したいと思います。

② 日本語史・日本文学史については、何冊か目を通しはしたものの、これという一冊を見付けることができないでいます。日本にはひらがながあるので、もっと方言の歴史とか解明されているかと思っていたのですが、現時点では見つけられていません。少々意外でした。
 
③ あってもよさそうなのに出版されていなさそうなものが明確になりました。

 スラブ語史、スラブ文学史、トルコ語史、トルコ文学史、ギリシア語史、ギリシア文学史(古代から現代までの通史)、セム語史(アッカド語からアラビア語まで)、エジプト語史、ヴェーダ語・アヴェスター語比較言語本

 セム語史については、一応一部近い記載がある英語書籍をあげてみましたが、専門書なので、もっと適当なものがあって欲しいところです。(アケメネス朝以降の)エジプト語は研究自体が進んでいないようです。セム語は、聖書関連でヘブライ語の学習人口が日本でもわりといるようですし、印欧語並みの読物レベルの研究史や言語史本が出ても良さそうに思えるので、是非とも今後の出版に期待したいところです。

 トルコ、ギリシアの日本語書籍がなさそうなのが残念です。日本でもチャガタイ語やチャガタイ文学、オスマン語やオスマン文学の研究者が結構いるし、突厥碑文の解読者もいるのだから、共著でトルコ語史やトルコ文学史本は可能だと思いますし、読者もある程度確保できるように思えます。ギリシアも、ギリシア文学史となると古代ギリシアだけで、(洋書はまだ探していないのですが)明治以来、相当なギリシア語習熟者がいる中で、中世以降現代までを扱った日本語のギリシア言語史や文学史の通史書籍がなさそうなのが意外でした。

 2013年11月に、日本イスラム協会公開講演会「トルコの歴史と文学-「トルコの歴史と文学―16-21世紀」が東洋大学で開催されていました。開催を知ったのは講演会終了後だったのでいけなかったのは残念ですが、ニーズはありそうなので、書籍も是非出版して欲しいところです。(以前トルコ観光局だったかのサイトに若干詳しいオスマン朝から現共和国にかけての文学史ページがあった記憶があるのですが、本日記事を書こうと探したところ見つかりませんでした)

 トルコ語史本ではありませんが、各地のトルコ系言語を比較した「アルタイ語のはなし」という書籍は参考になりました。この書籍は、テュルク・モンゴル・ツングース語をアルタイ語と総称する、現在では否定的な学説が影響を持っていた時代の研究成果を基に書かれた本なので、アルタイ語学説が現在どのような扱いとなっているのか、学説史等を参照した上で位置づけを把握する必要がありますが、各地トルコ系言語がいかに近いかが良くわかります。同じ出版社のシリーズ本として、フィン・ウゴル系言語を扱った「ウラル語のはなし」も役に立ちました。

 ヴェーダとアヴェスター語に関しては、1893年に出版されたWilliam Dwight Whitneyによる「The Veda; The Avesta; The Science of Language 」という書籍の復刊本が何種類かAmazonに出品されていますが、これは、図書館でざっと見たところ、古代語叢書の1巻(ヴェーダ語),2巻(アヴェスター語)の部分を一緒に収めた書籍というだけで、ヴェーダ語とアヴェスター語を比較した本ではなさそうです。第3巻は中国語となっています。 ヴェーダとアヴェスター語は共通している単語が多いと研究されているのにも関わらず、関連性に絞った内容の書籍が見つからないのは残念です。



④ ないのは予想していましたが、読んでみたいのが以下の地域書籍です。

 アルメニアやグルジア、シリア語とその文学。教会史や自国文学・翻訳文学などが残っていることから、読み応えのある内容を期待できそうです。

 アルメニア語史に関しては、「古典アルメニア語文法(千種 真一著)」 、「古典アルメニア語文法 (佐藤 信夫著)」 (「詳解 アルメニア語文法―印欧比較言語学の主要言語」の再販本です) 、「現代(西)アルメニア語(佐藤 信夫著)」 の中に数頁つづ掲載されている解説をつなげることで、若干アルメニア語史情報を集めることができました。アルメニア文学史については、ネットで公開されている「(翻訳)レヴォン・テル・ペトロシアン 『アルメニアの古い翻訳文学』 訳・戸田 聡」や、「中世アルメニア寓話集」が役立ちました。近現代アルメニア文学情報が見つけられていないのが残念です。現在のアルメニアでも若い人には村上春樹が読まれているようですが。。。

 アルメニア語に関しては、日本で現代アルメニア共和国の言語(東アルメニア語)書籍が無い(上掲現代(西)アルメニア語とは世界のアルメニア移民社会での言語)のに対して、グルジア語については、白水社から「ニューエクスプレス グルジア語《CD付》」や「グルジア語会話表現集 Let’s Talk in Georgian! 山上博子著)」 など近年出版されているのが不思議です。しかし会話本が出ているわりには、グルジア観光ガイドの専著は出ていないのも不思議です。

 一方アルメニア史については、アルメニア虐殺や、世界のアルメニア移民社会の宣伝活動の効果からか、日本語でもアルメニア通史の書籍は出ていますが、グルジア史の通史書籍はまだ出ていません。アルメニアもグルジアも、観光資源は多く、日本人が好きそうな場所だという印象があります。旅名人ブックスのシリーズで「グルジア」や「アルメニア」などと専著があっても良さそうなのに無いのが不思議です。交通が不便なことと政情が安定していないということから出版に踏み切れていないのではないかと思われますが残念な気がします。


⑤ カタルーニャ語史と文学史

 スペインの文学史や言語史の本を幾つか参照しましたが、どれも実体はカスティーリャ語と文学の本でした。一昨年岩波文庫から出版された「スペイン文学案内」では、冒頭で、「カタルーニャ語、ガリシア語、バレンシア語、バスク語で書かれた文学は一切扱っていない(p4)」と書かれています。そこでカタルーニャ文学と言語史本を探してみました。言語史本はまだ見つけられていませんが、カタルーニャ文学史については、「完訳ティラン・ロ・ブラン」の解説部に数ページ、同著者の田沢耕 「物語 カタルーニャの歴史―知られざる地中海帝国の興亡」に文学が若干掲載されていました。

⑥ オランダ文学史

 かねがね疑問に思っていたことの一つに、近世スペインやイングランド、フランス、イタリアでは、経済勃興により文学や演劇が勃興したのに対して、一時は世界最先端の経済力を持ち、絵画では大きな足跡を残したオランダの文学や演劇の情報が全然流通していないのは何故だろう、と思っていました。16-7世紀オランダに於ける文化投資の構造について興味がでてきました。少し調べたところではわからなかったため、そのうち本腰を入れて調べてみたい主題です。


⑦ エジプト語史

 ペルシア人、ギリシア人、ローマ人に千年間征服されていた間も、古代エジプト人は、そのままエジプトに住み続け、エジプト語を話していた筈で、アラブ人による征服後も、数世紀間はエジプト語を話し続けていたのにも関わらず、あまり研究者が多くはなく、専門書ばかりで、英語本含めて一般人向け書籍が無さそうなのが残念です。最近では、エジプト語はアフロ・アジア語族として、セム語族と同系というまとまりにくくられているようですが、セム語との共通点について記載された書籍もあまり無さそうです。印欧語史、セム語史と同じレベルでのエジプト語史(古代から現代まで)の書籍が読みたいところですが、しばらくは期待できそうになさそう。



⑧ 翻訳文学

 結構不足しているように思えるのが、翻訳文学の記載です。国民国家の文学史となると、国産のものの歴史となってしまうのは、文学史の立場からするとわかるのですが、社会史の立場からすると、影響を与えた翻訳文学を記載しないことは大きな不足を感じます。現在の日本でも、日本文学史や大衆文学史が編まれる場合、海外翻訳文学の動向やサブカルチャーである推理小説やSF作品など、推理小説史本やSF史本で扱われているものの、文学全体の動向を扱った文学史本ではあまり扱われていない印象があります。古代インド文学や中世アラビア文学などは中世末期にヨーロッパへ流入し、民間の物語文学に大きな影響を与えたのにも関わらず、ヨーロッパの文学史にはあまり紹介されていない印象があります。古代ギリシアの古典はラテン語に翻訳されたものの、一方ラテン語作品(キケロとかカエサル)のギリシア語訳は、少し調べたところでは、存在していたのかどうかさえわかりません。ラテンアメリカ文学史では、ラテンアメリカの作家の作品史ではあっても、ラテンアメリカ諸国で実際に読まれていた書籍の何%が翻訳文学なのか、通常の南米文学史本では見出すことができません。
 翻訳文学というものも文学史を構成する重要な要素だと思うので、国民文学・国民語文学という前提のある現在の文学史では抜け落ちてしまっている翻訳文学史著作というものも、もっと出て欲しいと思う次第です。


⑨ 普遍用語

 言語史の本を読んでいると、その言語独特の固有の概念や用語が登場し、それを理解するまでが一苦労です。これは建築史の本にも感じていることです。例えば西洋建築であれば、ヴォールド、スクゥインチ、ピア、フライング・バットレスなどの用語を覚えないとどうにもなりませんが、一方中華圏建築では、梁と間・行、斗栱・組み物、瓦などが重要用語として登場します。中世西欧の屋根瓦はどうなっていたのか?西洋建築においてもバシリカ建築からロマネスク時代までの天井に使われた木造構造では梁間・桁行、組み物というテーマはあったかも知れないのに、その有無についてさえ殆ど言及されないのは何故か?中華圏建築では寄棟、入母屋など屋根の構造が非常に重視され、細かく分類されているのに(日本の)西洋建築史本で寄棟造、入母屋造という構造の言及が無いのは何故か(西欧建築にも寄棟(Hip roof)、入母屋(Gablet_roof)は存在する)、礎石を用いない掘立柱建物は、日本建築史では重要概念だが、西洋建築史では土台の記載はあまり目にしたことが無い、等々。気になっているところを挙げだすと切がありませんが、建築史の本を読んでいると、各時代の建築物の推移を、特徴的な概観や意匠中心に、その地域・時代の用語を用いて記載していることが殆どだという印象を強く抱きます。極論すれば、現在の建築史とは意匠史なのではないか、とさえ思えてしまうところがあります。全ての時代や地域を通じて、一貫して使える基本建築概念用語集、というのをまず出して欲しい、などと思ったりしている次第です。まず普遍用語を覚えてから、西欧建築方言、中国建築方言、日本建築方言に進めると助かるのですが、現在の、少なくとも一般向け建築史本では、普遍用語への配慮が少なく、基本的に著者は、西欧建築方言、中国建築方言、日本建築方言だけ、で語っていて、その方言に用語が無い部分は触れずに終わってしまっているように思えます。この意味では、比較建築史学というものはまだあまり成熟していないということなのかも知れません。

 似たようなことを言語史にも感じます。中国語の反切における声母とは韻母は、子音と母音じゃ駄目なのか、とか(理解が進むと駄目だということはわかるのですが、概念に馴染むまで少々苦痛でした)、押韻は、単に韻文という概念でいいのではないか、とか、反切はアブギダと関係がありそうだけど、中国語史の本にはアブギダという用語は登場しないとか。言語史も建築史も、史料や対象に馬なりな解説と用語となってしまっているところにストレスを感じます。言語史の本をあれこれ読んでいると、自明だった子音と母音の違いもわからなくなってきてしまい、全音素の完全な一覧表と全発音を聴けるサイトとか、普遍文法用語とかを知りたくなってきてしまい、結局言語学の本にも手を出しつつある状況に陥ってしまっている次第です。比較言語学は、19世紀以来の伝統ある学問なのに、どうしてこういうことになっているのだろうか、と結局言語学史の本にまで手を出すことになってしまいました。

 建築史や言語史に関する普遍用語の話は、書き出してみると、結局のところこれらは、そのままグローバル・スタンダードの課題や問題と同質であることに気がつきました。とはいえ普遍用語や概念には限界があるとはいえ、全体を整理するには役立ちます。普遍用語や概念を批判する前に、まずはグローバル・スタンダード(普遍用語)で整理し、その後に、個別の文化概念を洗い出す、というのが順番ではないかと思うので、やはり一度は建築史や言語史に関しても、普遍用語による叙述を確立して、その後乗り越える、という方向にいって欲しいと思う次第です。


~全体所感~

 当初は各国一般通史の補完という感じで読んできた言語と文学史ですが、 このように整理してみると、当初予想した以上に各国・各地域の書籍が出ていることがわかりましたが、一方、ホワイト・スペースの方もかなりあることがよくわかりました。更に、言語史本を読みながら、平行して各国演劇史、比較言語学史などにも興味が出てきてしまっている状況です。最後の建築史や言語史に関するグローバル・スタンダードの話は、「世界文学」概念の定義とも関連する話なので、次回その話を書きたいと思います。それにしても世の中わかっていないことや、情報が流通していないことが、まだまだ沢山あるのだと改めて感じた次第です。
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by zae06141 | 2015-06-14 00:25 | その他歴史関係 | Comments(0)
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