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今回紹介するエジプト映画は、今GWに見たものではなく、最新の情報流通状況を調べてまとめてみたものです。いづれも、ネットで日本語のあらすじの入手が可能で、英語版dvd/vhsも入手可能な作品ということで、本記事ではあらすじの紹介は行わず、作品の宣伝を目的としたいと思います。
「ピラミッド」 1955年・米(原題「LAND OF THE PHARAOHS」) 本作は、「Weblio辞書」掲載の映画情報に、日本語での基本情報とあらすじが記載されています(US Wikiにもあらすじの記載あり)。また、ラスト4分がネットに掲載されています(全編は掲載されていないようです)。私が見たのは30年程前、中学か高校生の頃に実家の白黒テレビで見たので(カラーテレビは家族が別の番組を見ていた)、ずっと白黒映画だと思い込んでいたのですが、カラー作品だったと今回はじめて知りました。それにしても、一回見ただけなのに、ラストは、殆ど台詞まで含めてほぼ記憶通りでした。それだけ印象の強い終わり方だったのだと思います。本作は、大ピラミッドが舞台であることから、古王国時代が舞台で、しかもエジプト古代の巨大ピラミッドの設計や仕掛けへのロマンを掻き立ててくれる内容です。ソード・サンダル映画とは製作者の視点も目的も異なるとは思いますが、広い意味ではSS映画の一種と言えるのではないかと思います。 ラスト、通路に次々と石が落ちる音が轟き、玄室が閉じ込められてゆく音に「死にたくない!死にたくない!」とすがり付いて叫ぶ策謀家の王妃を、無言で見守る高官と役人たちの場面は印象に残ります。是非、日本語dvdを出して欲しいものです。 本作は、本日現在日本語版VHSが、15000円と非常に高額ですが、一応出ています。英語版VHSは、日本のアマゾンで3500円で出ています。USアマゾンでは、新品及び中古DVDが8ドルから出ており、送料含めても2000円以内で入手可能です。 ところで、監督のハワード・ホークスは、ハリウッドの名物監督で、SFの古典映画「遊星よりの物体X」や、典型的なジョン・ウェイン西部劇「リオ・ブラボー」などを監督した方。歴史映画も撮ってるとは知らなかった。どのジャンルを撮ってもそこそこ面白い。なんでも監督できるん人だったんですねぇ。。。 「太陽の王子 ファラオ」 1966年・ポーランド 「原題Pharaoh(ポーランド語 Faraon スペイン語 FARAÓN )」 あらすじは、Goo映画紹介やWeblio映画情報にあります。舞台は前11世紀のエジプト。いったいどうして、ポーランドで古代エジプト映画なのか、製作理由に興味のあったのですが、原作は19世紀のポーランドの小説家Bolesław Prus(1847-1912年)の同名の作品だったのですね。彼は、国家の構造に興味があり、これを書いたらしいので、古代ローマを19世紀のロシア帝国に仮託したシェンキェヴィッチの「「クォ・ヴァディス」と同じような理由なのかも知れませんね。 vhsは英語版が出ており、dvdもやはり英語版が出ています。 上記amazonを見ると、180分もあるのですね。私が20年程前レンタルで見た日本語版ビデオは、119分の短縮版で、日本劇場公開時も119分の短縮版だったようです。こういうことを知ってしまうと、いつか、180分の完全版を見てみたい、という気になります。ソード・サンダル映画とは異なります。 以前見た当時は、王子と神官団の政争で神官団が日食を政治的に利用するなど政治の権謀術数を描いた、「共産主義リアリズム映画だなぁ」と思ったものですが、今見ればまた印象も変わるかも知れません。本作は、ネットに20分程の映像があがっており、それを見て購入の判断をしても良いかと思います。下記は日食で暗くなっている場面。 下記は、登場人物達の肌の色。茶色いのもリアルな感じ。 「エジプト人」 1954年・米 原題THE EGYPTIAN フィンランド人、ミカ・ワルタリ原作。邦訳が角川文庫から全三巻で出ています。映画のあらすじ紹介がGoo映画紹介にあります。日本語版はdvdもvhsも出ていないようですが、英語版dvdが出ています。USアマゾンのパッケージを見ると、中国語版と韓国語版が出ているようです。せっかくだから日本語版も出してくれればいいのに(訂正5/17 よくさがしたら、ネットに全編掲載されていました)。 ミカ・ワルタリの原作は文庫で3冊、約850ページと長く、これを139分の作品にまとめているので、異なる部分もあります。原作は、実在するが、欠損部分のある古代エジプトの旅行記として有名な医師シヌヘの物語りを、作者の想像力で大きく膨らまし、前14世紀のエジプト、バビロン、ヒッタイト、キプロス島など、当時のオリエント世界の全体を描く壮大な作品となっていますが、映画は139分なので、基本的にエジプトから出ません(ただし、エジプト在住の退廃したバビロニア人女性が登場し、原作にある退廃したバビロンの雰囲気は一部表現されています)。基本的にソード・サンダル映画とは言えないかも知れないが、やはり広い意味ではSS映画という印象があります。ジーン・シモンズ、ビクター・マチュア、ピーター・ユスチノフなど、当時の一線級の俳優達が出ている豪華キャスト作品です。また、長岡良子氏の漫画、「ナイルのほとりの物語(全11巻)」は、様々な古代オリエントの短編・中篇・長編なら成り立つ作品ですが、その5-7巻所収の「黄金の地平」が、大体映画と同じ時代・地域・題材を扱っています。ただし、長岡良子氏の当該作品の後半の巻は、ネット中古販売でも、古本屋でも滅多に見かけないのが残念です(多分、後半、御伽噺のようなものも増えてきてしまったので、当初の大人向けな内容の読者層が離れてしまい、更に若年層の取り込みに失敗して部数が落ちてしまったのではないかと推測しています)。一方、ミカ・ワルタリ原作の角川文庫版は、ネット中古では、全巻入手は難しそうですが、東京の古本屋では、3巻2000円程度で出ているのを良く見かけるので(安いものでは3巻500円というのを見たことがある)、現時点ではそれ程稀購本とは言えないように思えます。下記は映画に登場するテーベ市街。 テーベ市街の、主人公の一人の経営する酒場などが登場しますが、このあたりがSS映画っぽいんですよね。 と、ここまで書いてきて、最後の「エジプト人」については、お奨めとは言えない記載となってきてしまいました。日本語版が出ていないのも無理からぬところなのかも。。。 ところで、ミカ・ワルタリの「エジプト人」は、主人公シヌヘの回想という体裁をとっており、結構印象に残る場面も多く、作者の強力な想像力に、読後、この時代のオリエント世界の世界観が焼きつきそうになってしまう程です。その世界は、かなり作者独自の色合いが強く、映画の世界観とはかなり異なるので、英語版dvdを買って、原作の映像世界を楽しむ、という感じにもならないように思えますし、文学作品としては、これはこれでありだな、とは思うものの、前14世紀のオリエント世界のイメージをこれに規定されてしまうのは、「歴史小説好き」な方には問題ないとしても、「歴史好き」な方にはあまり良いこととは思えないのでした。SS映画は、あまりに変なところが多く、寧ろ歴史のイメージ形成に対しては人畜無害なものと思うのですが、ミカ・ワルタリの「エジプト人」は、作者の巨大な筆力と想像力に飲み込まれてしまう、そんな作品に思えるのでした。 古代エジプト映画一覧
by zae06141
| 2011-05-15 22:25
| その他の時代の歴史映画・ドラマ
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