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今回の震災と原発事故で思い出した作品です。「サクリファイス」と「オーケストラ・リハーサル」は、アマゾン書いたレビューをそのまま掲載します。
「サクリファイス」は、旧ソ連の映画監督、アンドレイ・タルコフスキーの遺作。1986年作。 -- 核戦争が起こり、主人公が、「犠牲を捧げるから、核戦争を無かったことにしてくれ」と魔女に頼む。夜が明けると、核戦争は無かったことになっていて、主人公は、家を焼く。家を焼いた主人公は、家族によって、病院送りにされてしまう。 東日本大震災が発生し、11日が経ちました。公開時(日本公開1987年)に見たときは、美しいけれど冗長で退屈な印象もあったこの映画が、私にとって、今はじめてとても重要な意味をもつようになりました。もし本当に、今回の地震・津波とその後の原発損傷が無かったことになるのであれば、なんらかの犠牲を捧げても構わなかった。そう考えている方は、少なからずいるのではないでしょうか。でも、現実は、この主人公のように、周囲にその行為はまったく理解されず、病院送りになるか、財産を失うだけになるか、そもそも、「起ってからでないと、「犠牲を捧げてもよかった」などと思うことなど、そもそもできない」というパラドックスに直面することになります。 主人公には魔女がいるという幸運がありました。しかし、我々に魔女はいません。それはどうにもなりません。だからこそ、取り返しのつかないことになってから後悔しないよう、せめて人災が極力抑えられるように普段から意識的に取り組んでいかなくてはならない。3月11日を境に、私にとって本作は、戒めを説く作品と変わりました。魔女はいない。でも、日々の少しの犠牲の積み重ねで大きな危機が回避できるのであれば、そのように生きたい。このような作品を作られた監督に感謝します。 -- この作品を最初に見たときは、頭でっかちな大学生の時で、イングマル・ベルイマンの「第七の封印」と併せて、社会学・人類学でのコスモス・カオス理論に無理くりあてはめて解釈していました(その無理な見方は以前本ブログでも載せています(「第七の封印とサクリファイス」)。しかし、両作品を今年2月に久しぶりに見返してみて、学生時代の解釈があまりに強引なものだったことに気づきました。そうこうしているうちに東日本大震災・福島原発事故が起こり、漸く、監督が本作に込めた意図がわかったような気がします。震災後の対応で日本の社会や政治の抱える問題点が改めて強く浮き彫りになった、という前向きな部分を考えてみることもできますが、それでも、やはり無かったことになって欲しい。。。。強くそう思います。何故ならば、今震災・原発対応で日本社会で起こっていることは、前の大戦で起こったことに似ているのだから。前の戦争で何が起こっていたのか学ぶだけでは効果は低いのかも知れませんが、今回の、そして今も拡大しつつある被害を考えれば、前の大戦で十分だと思うのです。 「オーケストラ・リハーサル」 イタリア映画界の巨匠、フェデリコ・フェリーニ監督の小品。1979年作。 -- 珍しくもないありふれたオーケストラのリハーサルが始まる。しかし、そのうち楽団員それぞれが勝手な主張をはじめ、指揮者はそれを統制できない。自己主張はやがて、勝手な行動へと走らせ、待遇改善を叫ぶ者、過激派の様に振舞う者、ビアノの下でセックスを始める者など、混乱はまるでサバト(悪魔の夜会)の観を呈するに至る。やがてどこからともなく壁を叩くことが聞こえ始め、音が大きくなるとともに会場が振動をはじめ、ついには壁を打ち破って巨大な建屋解体用の鉄球が姿を現す。半ば廃墟となった会場で、楽団員は再びオーケストラ・リハーサルを始める。。。。 東日本大震災と関連付けてこの作品を語ることは不謹慎の謗りを受けるのかも知れませんが、震災の復興と原発被害の拡大抑止に国を挙げて一丸となって努めなくてはならない時期なのに、近所の定食屋で、やたらと震災後の対応について「自衛隊を50万人でも直ぐ投入すれば良かった」「ヘリを直ぐ大量に活用すれば」などと現政権批判ばかりしている人を目にしました(自衛隊は事務官含めて25万程度ですし、全員投入したら国防がお留守になってしまいます。まず空き地を確保しなければヘリは着陸できません)。悲しくなるとともに、本作品を思い出しました。 廃墟となった会場で、リハーサルを再開させたものは、指揮者の力ではなく、楽団員が、音楽というものを捨てなかったからです。本作で登場している指揮者は、特別有能な指揮者とは思えません。しかし、楽団員が心を揃えれば、良い演奏を引き出すことができる程度の能力はありそうです。まあ、指揮者がマイナスとなるほど無能かつ行動的ではどこかに閉じ込めておくしかありませんが、今は空虚な批判をする時期ではなく、正しいデータ・情報に基づいた、復興に真に有益となる批判をする時期の筈です。 今の日本には、本作の楽団員にとっての音楽に相当するような、何かが必要なのではないかと思ったのでした。 -- アマゾンレビューには記載していませんが、「近所の定食屋」で遭遇した人は、東京都某区の市議の後援会の方でした。普通の人が演説をぶっているのならまだしも、政治関係者の方が、他の客もいる前で、大声で「これで国民も(前に選挙で民主党を選んだことを後悔し)目が覚めただろう」とまるで客全員が民主党に投票したかのように、やたらと「国民、国民」と叫んでいました。しかしその人が現政権を批判して、「こうすれば、ああすれば」と言う内容は、政権を取る前の民主党と同じく、現実のデータを知らずに語った空虚な政策と同じもの。きっとこの人も、支持政党が政権をとり、有事になって初めて自衛隊が25万人程度しかいないことに気づくのだろう。。。。正しいデータ・情報、財政根拠に基づかない施策・政策を述べる政治家とその関係者は詐欺師と同じ。お前こそ目を覚ませ、と言ってやりたかったのですが、大人気ない私は、帰りがけに「自衛隊には50万人もいませんよ」と耳元でぼそっと呟いて逃げ去ったのでした。。。。 3月31日の朝日新聞朝刊では、浦安市選挙区の立候補者が、「政策より御用聞き」とこぼす記事が掲載されていましたが、この時期の選挙ではわざわざメディアに話すまでもない、当然の話では無いでしょうか。御用聞きだけの政治家は政治家とはいえませんが、政策だけの政治家も何か勘違いしているようで困ります。私の父(神奈川県中央部在住)は、「市議は、選挙の時は来るくせに、こういう時にはまったく来ない。こういう時期こそ市民の状況を見にくるべきではないか」と電話で愚痴を言ってましたが、まったくその通りだと思った次第。特に父の住む住宅地は7割以上が年金生活者と言われており、平日家にいて投票率も高いご老人が多い地域で、効率的な選挙活動のできる票田地域なのだから、何故こういう時に出向かないのか不思議です。 「魚が出てきた日」 ギリシアのマイケル・カコヤニス監督の近未来SF映画。1960年代後半から70年代前半は、否定的な近未来を描くSF映画が多数製作され、まだキワモノ扱いだったSF映画に有名俳優が続々と出演していた時代。本作もキャンディス・バーゲンが出演しています。見たのは高校時代なので、何の役だったか忘れてしまいましたがいてもいなくても良かったような役だったような記憶があります。1967年米国製作。なお、この監督は、「トロイアの女」「イフゲニア」など、ギリシア神話も監督しています。「トロイアの女」は見ていませんが、「イフゲニア」は劇場で見ていて、神話というよりも、結構歴史的な、リアルな描き方で好きな作品です。日本語版はdvdもvhsも出ていないようなのが残念です。 「魚が出てきた」の意味は題名から想像される通り。そして、今後関東地方沿岸でも見られるようになるかも知れない事態を描いた作品。ここ数日、そうならないことを祈る毎日です。昨日の4月2日、釣り上げた魚の放射能測定を実施し鹿島灘漁業権共有組合連合会の小野勲会長が安全宣言をしましたが、これは放射能汚染水の海への流出(本日のNHK7時のニュースでは、水野解説委員の、映像から見る限りのざっとした推算では毎時7トン)を考えれば、毎日検査する必要がある話となってきていて、一回安全宣言を出せば済む話では無くなってきているものと思うのですが、いかがでしょうか。 「チャイナ・シンドローム」 ジェーン・フォンダ製作作品で政治的プロパガンダの強い作品はあまり好きでは無いのですが、これは結構気に入っています(ただラストはちょっとくさ過ぎだったような記憶がありますが。。。)。この作品、”風よ雲よ”氏が、アマゾンのdvdの3月10日投降のレビューで、「この直後のスリーマイル、そしてチェルノブイリ。現実が追いかけてます」と書かれていますが、あまりにタイミング良過ぎてレビューを書かれたご本人が一番衝撃を受けているのではないでしょうか。アマゾンの作品紹介で、「そのテーマ性は今も薄れるどころか、緊迫の度を増すばかりである」と記載された的田也寸志氏も、よもやここまでそれ以上の事が日本で現実に起こってしまうなど、どこまで予見していたであろうか。ご本人もショックを受けておられるのではないでしょうか。 ところで、福島第一原発現場作業者の待遇改善について、3/30日のNHKの7時にニュースで、恐らく東電の吉田昌郎・執行役員発電所長のインタビューによる改善希望が報道されました。更に3月31日の朝日新聞論説で待遇改善が主張され、4月7日号の週間文春の巻頭特集で現場状況の記事が掲載され、昨夜から本日にかけて掲載・更新されている読売新聞のネット記事では、 福島第一原発広報部の報道グループマネジャー・角田桂一氏が、「作業員の一部が福島第二原発に宿泊できるようになるなど環境は若干改善できた」と述べるなど、広くメディアに周知され、一部改善に向かっているとのことで、少し安心しました。前回の記事を書いた時点では、私はかなり絶望感を抱いていたのですが、まだまだ捨てたもんじゃないかも、と思いました(まあ、一言加えると、3月29日の読売新聞は、現場の過酷な待遇を大きく報道してはいたものの、横田一磨氏の話をそのまま報道しているだけで、待遇改善を訴える記載が見られなかったので、本日の読売の記事は嬉しく思いました)。とはいえ、BBCやCNNでは、被災地の困難の報道とともに、原発処理については、「何やってんだニッポン」という論調の記事が増えてきており、海外の苛立ちが大きくなって来ているように感じます。 最後。原発とは関係ありませんが、3月30日の外務省の報道会見では、これまでに134の国・地域と39の国際機関が支援の意思を表明したとされているものの、本日の産経新聞の記事では、日本が受け入れた国・地域と機関は約30に留まり、支援を断られた国からは不満が出ているとのこと。3月28日の読売新聞でも大きく扱われていました。一体何を考えているのでしょうか。検疫などが必要な物資はともかく、失礼だと思わないのでしょうか。 特に日本人の口に合うように、と気を遣っていただいたタイ米、インドネシアの毛布などには強い疑問を感じます(あとウクライナのヨウ素も)。毛布が薄ければ3枚でも5枚でも重ねて敷布団にしてしまえばいいのです(掛け布団にすると重すぎて、ご老人には耐えられないかも知れない)。まあ、支援は貸し借りの世界なので、後々の政治的思惑もあっての支援かも知れませんが、1993年に日本で米騒動が起こった時、せっかく送ってくれたタイ米を「食べれない」と、多くを家畜飼料や廃棄処分にしてしまった事件を思い出します。あの事件にも懲りずに、日本人に口に合うように(実際に合うかどうかはともかく)タイ米を用意してくれたタイ国と国民に失礼だと思います。今後放射能汚染が拡大し、出荷規制米などが増えて米不足にでもなってしまったら、タイ政府に「やっぱり送ってくれ」とでも言うのでしょうか。 私は被災者の気持ちがわからないで、このような主張をしている、と謗られるかも知れません。しかし、野宿以外(20代の一時期、バイクツーリングが趣味だった)で毛布や布団を重ねて凌いだ経験は何度かあります*1。中国のタクラマカン砂漠を旅行した時は、あまりの安さに、たまたま途中で一緒になった米国人バックパッカーでさえ敬遠した宿で、宿泊者は2人だけということがあり、あまりに寒くて他のベッドから布団と毛布を引き剥がし、4人分の毛布と布団を重ねて凌ぎました。湖南省を冬に旅行した時は、そこも安すぎて窓ガラスが入っておらず、2人分の布団を重ねて凌ぎました。重ねれば結構暖かいものです。毎日じゃないだろ?と言われればそれまでですが。。。。 タイ米の場合、1993年には、近所の行き着けの定食屋がタイ米になってしまい、確かに定食などのご飯だけで食べると美味いとは思いませんでしたがそれなりに食べれましたし、チャーハンはかなり違和感を隠せました。 国内支援物資でも、需給の調整が混乱しているのだから、海外については更に大変だ、という理屈もわからないではないのですが、貸し借り以前に、支援を断ったことが借りになってしまっては、まったく意味が無いように思うのですが。。。。 なお、外務省の各国支援物資一覧はこちら。各国支援詳細はこちらです。 *1 そう言えば、ブルガリアのソフィアは札幌と同じくらいの気温なのですが、2年目の冬休み、学生は皆実家に帰り、経済危機でもあり、数名の寮に残った者のためにセントラルヒーティングは使えないと、寮のセトラルヒーティングを切られ、肺炎になったのを思い出しました。セントラルヒーティングが入っていると、部屋の温度は20度くらいになり、部屋の中ではシャツ一枚でいられ、東京の冬より快適なんですよね。毛布も一枚しかなく、コートをかけて寝ていたら、1ヶ月後に肺炎になってしまったのでした。
by zae06141
| 2011-04-03 20:21
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